障害者向けに
安心トイレ
(日本経済新聞「夕刊トレンド」より)

障害者向けに安心トイレ
シャワー・流し台・ベッド
〜公共施設で設置広がる〜

 玄関の間口を広げたり、スロープや手すりを設けるなど、歩行スペースのバリアフリー化に重点を置いてきた各地の公共施設の間で、障害者向けトイレの整備に取り組む動きが広がっている。単にゆったりとしたスペースを確保するだけでなく、万が一のケースに備え汚れた衣類や体を洗い流すシャワールームを併設するといった配慮も。「安心して利用できるトイレがない」と、外出に二の足を踏む障害者が多いだけに、関係団体は「今後も自治体に理解や協力を求めたい」としている

 昨年7月にオープンした東京都江戸川区の区立中央図書館には、シャワールームを備えた身障者用トイレがある。がんなどで直腸などの摘出手術を受け、人工肛(こう)門や人工膀胱(ぼうこう)を付けた人(オストメイト)の利用に対応したもので、たまった尿を捨てたり人工肛門などを洗う流し台なども併設している。

 オストメイト向けのトイレの導入は、1998年の千葉県習志野市を皮切りに全国の自治体に広がっており、金沢市も昨年から公共施設に順次、設置する計画を進めている。日本オストミー協会(東京・葛飾)によると、国内のオストメイトは約30万人。外出先で尿や便が漏れ出て、惨めな経験をした人は数えきれない。専用トイレがあれば、もっと安心して外出できる」(稲垣豪三会長)

 茨城県取手市は近く、市役所内の身障者用トイレに大型のベッドを置く。脳性まひやせき髄損傷などで重度の障害を持った人やその家族らから「トイレを利用する際、しゃがみ込んで上着などを脱いだりするだけでも重労働。横になるスペースがあれば、負担はかなり軽くなる」との要望が相次いだため。このベッドは大手トイレ機器メーカーが身障者向けに開発したもので、通常のベッドよりシートの高さを低くし、車いすに座った状態から移乗しやすいという。

 健常者、身障者の区別なくだれもが利用しやすいユニバーサルデザインのトイレを開発・販売しているエムズジャパン(静岡・浜松)には、自治体を中心に「身障者用のトイレのカタログを送ってほしい」などの依頼や問い合わせが急増。昨年は前年の三倍の約300件に上ったという。

 日本オストミー協会の稲垣会長は、「障害者や高齢者にとって、トイレの使い勝手の良しあしは重要な問題。深刻な現状をもっと理解してもらい、公共施設だけでなく、デパートや駅などのバリアフリー化が広がってほしい」と訴えている。

  使いやすい「札幌式」も

 障害者にやさしいトイレとして、広く知られているのが「札幌式」。小学生の三男が交通事故で車いす生活となったのを機に、札幌市の男性建築家が13年前に考案。便座と足元の天板を平らに組み合わせたり、可動式手すりを付けるなど随所に工夫をこらし「横向き、うつぶせなど、どんな姿勢でも楽に利用できる」との高い評価を得ている。2000席の大ホールを持つ札幌コンサートホール、長浜市市民会館(滋賀)など七道県、計九ヶ所の公営施設に設置されている。

 日本経済新聞 2001年(平成13年)2月2日(金曜)夕刊、夕刊トレンド「バリアフリー」より転載。

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