朝日新聞西部本社版より
カラス被害を
食い止める!!

カラス被害を食い止める!!

 カラスは童謡にも歌われているほど、日本人にとっては昔から身近にいた鳥。しかし近年その数は急激に増え、ゴミを散らかしたり大きな鳴き声で私たちを悩ませるだけでなく、繁殖シーズンには人を襲うといった問題も起こっている。こうした被害をどのように食い止め、人間はカラスとどのように付き合っていけばいいのか。カラスの生態に詳しい宇都宮大学教授の杉田昭栄氏に、お話をうかがった。


頭がよく繁殖力も非常に強い

 カラスにもいろいろな種類がいますが、市街地でよく見られるのはハシブトガラス、田んぼなどに多いのがハシボソガラスです。カラスは雑食で何でも食べますが、ハシブトガラスは特に肉を好み、街中でゴミ袋をあさっているのは多くがこのハシブトガラスです。
 カラスは鳥類の中でも最も進化したグループのひとつと言われ、脳の発達の度合いは犬や猫を上回るほど。しかもどんな場所にも巣を作ることができ、繁殖期も3・4月ごろから6月ぐらいまでと長く、産卵や子育ての時期にばらつきがあるのが特徴です。カラスは1回平均2〜5個の卵を産みますが、先に生んだ卵から温めていくので、ヒナがかえる時期もばらばらです。そのためもし外敵に襲われても、他のヒナや他のファミリーが生き残れるというわけで、これはカラスという種のたくましさと言えるでしょう。

  増えた最大の原因は人間が出したゴミ

 このように繁殖能力に長けたカラスですが、その数が爆発的に増えた一番の原因は、エサとなるゴミの量が増えたことにほかなりません。彼らは、人間の出すゴミ袋の中に自分たちの好むエサがあることを学習し、次第にゴミ袋を狙うようになったのです。栄養価の高い生ゴミであるエサはたくさんのカラスを養うことができるため、生ゴミの増加はカラスの生存率の向上につながります。
 カラスが増えたことで、特に市街地では袋のゴミを散乱させたり、大きな鳴き声やフンで私たちを悩ませることも多くなりました。また繁殖期には、子どもを守るために人を襲うこともあります。

  習性を理解し被害を食い止める工夫を

 カラスは非常に学習能力が高く、警戒心の強い鳥です。
 私たちの研究室でもこれまで、様々な防御商品を開発しました。これらはすでに市販され、ある程度の効果を上げているようです。さらにカラスの学習能力に対応した様々なカラス防御装置の開発や設置方法の工夫なども必要でしょう。もちろんまず人間の側が、ゴミ出しのマナーとルールを守ることが大切なのは言うまでもありません。

 個体数と被害をこれ以上増やさないために

 カラスは仕草もかわいく、本来ならもっと愛されていいはずの鳥だと思います。好戦的な生き物ではないので、繁殖期以外に人を襲うことはめったにありません。現在のような問題が起こるほどカラスの数を増やしてしまったのは、私たち人間です。多少の間引きはやむを得ないとしても、ただカラスを減らすのではなく、寄せつけないようにする工夫が私たちの側にも必要ではないでしょうか。カラス問題は、私たちがゴミ問題や自然との調和を見つめ直す、ひとつのきっかけになったいるのかもしれません。 (談)

 朝日新聞西部本社版 2003年(平成15年)3月24日(月曜日)朝刊より転載。


 宇都宮大学農学部神経解剖学
 教授  杉田昭栄
 ●宇都宮大学農学部畜産学科卒業、千葉大学大学院医学研究科博士課程生理系修了。専門は動物形態学、神経解剖学。日本解剖学会、日本実験動物学会、日本獣医学会評議委員などを務める。医学博士、農学博士。

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